新型コロナウイルス (COVID-19)によるパンデミックは世界経済を停滞させ、日本でも従来の働き方や生活様式の変革が余儀なくされています。では、地球への影響は?太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーはこれからどうなるのでしょう?
目次:
新型コロナ不況でCO2排出量が17%減
在宅ワーク普及で個人の電力需要は増加
これからの太陽光発電に期待されること
世界銀行の見込みによると、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、2020年、世界の国内総生産(GDP)は5.2%縮小すると発表しています。これは、過去数10年間で最悪の世界的不況とされ、第二次世界大戦後以来の景気後退と予測されます。
新型コロナウイルス感染防止策としてのロックダウン(都市封鎖による封じ込め)により経済活動が停滞し、それに伴い、エネルギー需給、電力需給も低下。IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)によれば、2020年通年の世界のエネルギー需要は6%低下すると予測されています。
※IEA “Grobal Energy Review 2020”(https://www.iea.org/)Projected change in primary energy demand by fuel in 2020 relative to 2019を参考にグラフ作成
中でも、石油や石炭などの化石エネルギー(化石燃料)の需要が大幅に減少傾向を示しています。一方、再生可能エネルギーは唯一、前年比で約1%増加すると予測。ここ数年で設備が大幅に増加しているのに加え、運用コストも低下していて、世界各地で優先的に接続されるであろうというのがその根拠となっています。
ご存じのように、再生可能エネルギーは化石エネルギーに比べると、発電時にほとんどCO2(二酸化炭素)を発生させません。今や再生可能エネルギーの主力となっている太陽光発電は、下図の通り、石炭火力によるCO2排出量全体に比べると、事業用でもわずか約6%です。
各種発電技術のライフサイクルCO2排出量
※経済産業省 資源エネルギー庁 なっとく!再生可能エネルギー スペシャルコンテンツ『「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点』(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/lifecycle_co2.html)より
化石燃料の需要低下とともに、世界のCO2排出量も低下。イギリスのイーストアングリア大学などの研究チームによると、2020年4月時点で、2019年の平均値と比べて世界のCO2排出量が17%も減少したそうで、英科学誌『ネイチャー・クライメート・チェンジ』にデータを掲載しながら発表しています。
一般的に、下記の計算式のように、経済成長に比例してCO2排出量も増えるとされています。新型コロナウイルス収束後、経済が回復するとともに、CO2排出量も反動で増加することのないよう、世界中で対策が講じられています。
※経済産業省 資源エネルギー庁 なっとく!再生可能エネルギー スペシャルコンテンツ『「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点』(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/lifecycle_co2.html)より
世界から日本へ目を転じてみましょう。
身近なことでは、緊急事態宣言に伴って、在宅ワーク(リモートワーク、テレワーク)が多くの企業で導入されました。自宅で仕事する人口が増加したことによって、個人の電力需要・消費量はむしろ増えているとする見方もあります。
ある試算によると、個人宅で空調や照明を1日8時間使用した場合、1日1人当たりの電力使用量は3.97kwh。在宅勤務導入前を上回ることになります。これまで自宅に太陽光発電を設置されてきたご家庭も、改めて日射量が多い昼間の電気を充電して貯めておける蓄電池の重要性を見直す傾向にあるようです。
投資家の方々にとって最も関心の高いことと言えば、2020年に改正されたFIT法についてでしょう。新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、延期となっていた太陽光第6回入札について、2020年6月5日、経済産業省は6月12日から受付を開始し、7月22日まで受付期間を延長とすることを決定しました。入札の流れと入札実施スケジュールは、以下のようになっています。
※一般社団法人 低炭素促進機構 入札実施要綱(太陽光発電) 2020年度改訂版
(https://www.teitanso.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/06/2020-nyusatsu-jisshi-yoko-taiyoko-20200610kaitei.pdf)より
また、日本では、脱炭素化に向けた地方自治体による「2050年二酸化炭素排出ゼロ宣言」がなされていますが、現在、99の自治体がこの宣言を表明し、その約半数が2020年に入ってから、つまり、新型コロナが世界中で猛威を振るい始めてからとなっています(2020年6月8日時点)。表明した自治体の人口を合計すると約6,386万人で、日本の総人口の過半数となります。
※環境省 地方公共団体における2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明の状況
(https://www.env.go.jp/policy/zero_carbon_city/01_ponti_200608.pdf)より
その中には、再生可能エネルギーの導入拡大、クリーンエネルギーの導入促進、さらに具体的に、全国有数のメガソーラー発電事業を計画している自治体もあり、太陽光発電の普及促進へ積極的に取り組んでいます。
こうやってさまざまな事象に焦点を当ててみると、新型コロナ感染拡大は世界の経済に大打撃を与えたとは言え、悪いことばかりとは言えないのかもしれません。特に地球環境にとって、また再生可能エネルギーの主電源化を主導する太陽光発電にとっては、課題とその課題をクリアするための方向性がむしろ明確になってきているのではないでしょうか。
ヨーロッパのEU(欧州連合国)では、この新型コロナ禍にあっても、気候変動対策の手を緩めない方針で、脱炭素化への投資が、持続可能的な経済発展へつながるという考えを持ち続けています。新型コロナの影響で低迷する世界経済の状況を明らかにしたIEAも、気候変動リスクへの長期的な対処にはエネルギー転換を推進する必要があるという趣旨の声明を幾度となく発表しています。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)も気候変動対策のためだけでなく、コロナ収束後の景気回復策としても、柔軟な電力系統やエネルギー利用の効率化は有効であると主張しています。世界資源研究所(World Resource Institute)の主要人物も、気候変動対策は経済にも好影響を与えると論じています。
今、経済にとっても、エネルギーにとっても、この新型コロナの世界的流行を境に大きなエポックを迎えていることは確かです。再生可能エネルギーの中でも最も私たちの身近に存在する太陽光発電。その太陽光発電の活用方法を考えることは、私たちの未来の生活を考えること、未来の世界経済を考えること、そして、未来の地球環境を考えることにつながっていくと言っても過言ではないでしょう。