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2020年8月21日 知ってるようで知らない太陽光発電の用語集【設備編・後編】

最近、注目のバーチャルパワープラントとは?プチソーラー、ミドルソーラー、メガソーラーの違いは?トラッカーって何のこと?知っているようで知らない、今さら聞けない、誰に聞いたらいいかわからない太陽光発電用語。今回は設備関連の後編です。

 

目次:

<タ行>

太陽光発電所

太陽電池

蓄電池

電気工作物

トラッカー(追尾式架台)

 

<ナ行>

ナス(NAS)電池

燃料電池

 

<ハ行>

バーチャルパワープラント(VPP)

ハーフセル

配電盤

バイパスダイオード

薄膜型

バスバー電極

バックコンタクト方式

バックシート

パワーコンディショナ

ヒット(HIT)太陽電池

フレーム

フローティング方式

分電盤

ベムス(BEMS)

ボス(BOS)

 

<マ・ラ行>

メガソーラー

モジュール

モニター

リチウムイオン電池

 

太陽光発電所

「発電所」という名前が付くと、巨大なものを想像しがちですが、そもそも発電所とは発電を主な目的として、電力を作るための発電装置とそれに付随する設備、そして電気を消費側に送出する送電設備を備えた施設のことです。規模の大小に関わらず、これらの設備を備えた事業用(産業用)太陽光発電施設はすべて太陽光発電所であり、つまりは、あなたが売電を行うために所有している野立ての太陽光発電も太陽光発電所の一つとなります。

 

太陽電池

一般的に「ソーラーパネル」と呼ばれていますが、実は家庭用の太陽光発電が登場した頃の日本だけの呼び方。その後、「太陽電池モジュール」という呼称が登場し、今はこちらのほうが一般的になっています。

「セル」も、「モジュール」も、「ストリング」も、「太陽電池」を構成する単位で、そういう意味では、いずれも「太陽電池」のこと。太陽の光エネルギーを電気エネルギー(電力)に変換する電力機器です。電池の名は付いていますが、電力を蓄える蓄電機能はありません。大きく分けてシリコン系、化合物系、有機系の3タイプがあります。

 

蓄電池

「二次電池」「充電式電池」「バッテリー」とも呼ばれ、充電することで繰り返し使用できる化学電池のことです。蓄電池を太陽光発電システムと併用することで、様々なメリットも生まれます。太陽電池モジュールにより発電された電力を蓄電池に貯めておくことで、夜間や災害による停電などの緊急時に使用することができます。

 

電気工作物

電気を供給するための発電所、変電所、送配電線路をはじめ、工場、ビル、住宅等の受電設備、屋内配線、電気使用設備などの総称です。太陽光発電設備も発電所ですから、電気工作物となります。電気工作物は設備規模によって大きく2種類に分かれ、太陽光発電で言えば、50kW未満の低圧システムは「一般用電気工作物」、他人に電気を供給する事業を営む者により設置された電気事業用電気工作物、高圧以上の受電設備や発電用の設備などの自家用電気工作物は「事業用電気工作物」となります。

 

トラッカー(追尾式架台)

「追尾式架台」の名の通り、太陽の一日の動きを追尾して、太陽光パネルに常に効率よく光が当たるよう傾き角度を自動で制御する架台のことです。

 

ナス(NAS)電池

ナトリウム・硫黄電池のこと。負極にナトリウムを、正極に硫黄を、電解質にβ-アルミナを利用した高温作動型二次電池で、単にNAS(ナス)とも呼ばれます。太陽光発電の蓄電池としても用いられます。

※NAS電池は日本ガイシの登録商標です。

 

燃料電池

水素と酸素が反応し水に変化する過程で電気を発生させることを利用した装置です。「電池」という名が付いていますが、蓄電池のように充電した電気を溜めておく機能はありません。太陽光発電設備に燃料電池と蓄電池を組み合わせることで、太陽電池モジュールの出力変動に合わせて制御し、電力系統への変動を抑制して影響を最小化することができます。

 

バーチャルパワープラント(VPP)

※経済産業省 資源エネルギー庁「バーチャルパワープラント(VPP)・ディマンドリスポンス(DR)とは」より(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/about.html

VPPとはVirtual Power Plantの略で、「仮想発電所」とも呼ばれます。住宅用などの小規模な太陽光発電所や蓄電池、燃料電池、充電ステーションなどを含め、それらをIoT(Internet of Things =モノのインターネット)で結ぶことによって、あたかも一つの大規模発電所のように機能させる構想です。

 

ハーフセル

「ハーフセルモジュール」「ハーフカットセル」とも呼ばれます。セルは太陽電池を構成する最小単位ですが、それをさらに1/2サイズにカットし、セル内部の電流を半減させて抵抗を小さくし、発電ロスの低減やモジュール変換効率を高めたものです。

 

配電盤

「キュービクル」や「高圧受変電設備」とも呼ばれています。電力会社から送られてくる高圧の電気を受け、高圧を低圧に変圧して「分電盤」へと分配する役割があり、工場などに設置されています。太陽光発電には、この「配電盤」とちょうど逆の役割を持った設備があります。それが、「集電盤(集電箱)」です。

 

バイパスダイオード

太陽電池と組み合わせることで、太陽光発電の不具合を防ぐ機能を果たす装置のことです。バイパスダイオードはソーラーパネルと並列に接続し、たとえば日陰になって発電していないセルがあった場合、バイパスの名の通り、バイパスダイオードを通して電流が流れ、セル内で抵抗が生じることを回避し、パネル全体の不具合や破損を防ぎます。

これに対し、バッテリー(蓄電池)などから逆流してきた電流をブロックする役目を果たすのが、「逆流防止ダイオード」です。

 

薄膜型(はくまくがた)

「薄膜シリコン型」「薄膜シリコン太陽電池」「アモルファスシリコン太陽電池」とも呼ばれます。厚みが1μm以下のごく薄い膜状のシリコンを何層にも積み重ねて構成された太陽電池です。ガラス基盤に直接シリコンの膜を蒸着させる方法を用います。

 

バスバー電極

セル表面にある白い線のことで、セルが発電した電気を流す電極を指します。セル表面には2種類の配線があり、細く数が多い配線をグリッド線、太い白色の配線をバスバーと言い、グリッド線はバスバーに直交するように接続されています。

 

バックコンタクト方式

バスパー電極をセル裏面に配置した方式のことで、この方式を用いたセルを「バックコンタクトセル」「裏面電極型セル」と呼びます。セル表面の配線材がなくなることで、太陽光の当たる面積を増やして、光エネルギーをより多く取り込み、変換効率を高められるメリットがあります。

 

バックシート

太陽電池モジュールの裏面に貼られるフィルムのこと。太陽電池の心臓部であるセルを保護するためのものです。

 

パワーコンディショナ

「パワーコンディショナー」(power conditioner)とも表記され、略して「パワコン」とも呼ばれます。太陽光発電システムで発電された直流電力を交流電力に変換する機器のこと。一般的なパワーコンディショナは、インバーター部、系統連系保護装置部、絶縁変圧部の3つから構成され、電気を効率よく変換するとともに、安全・安定的に供給する役目を担っています。

特に重要なのがインバーター部で、 ここで電力を何%ロスなく変換できたか示す値が「パワーコンディショナ変換効率」となり、これがパワーコンディショナそのものの性能を表します。まさにパワーコンディショナの心臓部と言っていいでしょう。

 

ヒット(HIT)太陽電池

HITはHeterojunction with Intrinsic Thin-layerの略。「ヘテロ接合型太陽電池」「ハイブリッド型太陽電池」とも呼ばれ、ヘテロ接合とは物性の異なる材料同士の接合のことで、単結晶シリコンとアモルファスシリコンを組み合わせた太陽電池を指します。

 

フレーム

太陽電池モジュールの四辺をアルミ合金など囲って補強する枠のこと。

 

フローティング方式

「フロート式太陽光発電」とも言い、太陽光発電システムを水面に浮かせて設置する方式のこと。溜め池や湖、最近では海やダムに浮かべた広大な水上メガソーラーも注目を集めています。

 

分電盤

「配電盤」から受け取った電気を、回路を分けて送電するのですが、漏電をチェックして防いだり、余った電力を逆流させたりという役目もあり、ブレーカー(配線遮断器、漏電遮断器)、電力量計、制御装置などが取り付けられています。

電力会社から電力を購入する流れは「順潮流」、逆に作った電気や余った電気を電線を通して電力会社へ送るのが「逆潮流」、つまり売電です。電気には高電圧から低電圧へと流れる性質があり、電気を電力会社に送るには電圧を電力会社の流す電圧より高くする必要があります。この変圧コントロールを自動的に行っているのも「分電盤」です。

 

ベムス(BEMS)

BEMSとは、ビル内の配電設備、空調設備、照明設備、換気設備、OA機器等の電力使用量のモニタリングや制御を行うためのシステムです。BはBuilding、EMSはEnergy Management Systemの略で「エネルギー管理システム」のことを表し、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーや蓄電器の制御等を行うシステムを意味します。

ベムス(BEMS)の他に、HEMS(Home Energy Management System)=家庭内エネルギー管理システム、FEMS(Factory Energy Management System)=工場内エネルギー管理システム、CEMS(Cluster/Community Energy Management System)=地域内エネルギー管理システムがあります。

 

ボス(BOS)

BOSはBalance of Systemの略で、周辺機器を表す言葉です。太陽光発電では、太陽電池モジュール(太陽光パネル)以外の周辺機器、パワコン、架台、ケーブルなどを指します。

 

メガソーラー

出力1MW(1メガワット=1000kW)以上の大規模な太陽光発電所の総称です。出力10kW~1000kWシステムの小・中規模な太陽光発電所は「ミドルソーラー」、また最近では、出力10kW~50kW未満の太陽光発電所は「プチソーラー」と呼ばれています。

 

モジュール

「太陽電池モジュール」「太陽光発電モジュール」「太陽光モジュール」「太陽光パネル」「太陽電池パネル」「ソーラーパネル」といろいろな呼び方がありますが、すべて同じものを意味します。

モジュール (module)とは、そもそも工学などにおける設計上の概念で、システムを構成する要素となるものを指します。いくつかの部品的機能を集め、まとまりのある機能を持った部品のこと。

太陽光発電以外の分野でも、たとえば建築業界なら建築資材の寸法を表したり、工業分野では歯車の大きさを表す値を示したり、IT業界ではコンピュータプログラムなどを構成する部分を指したりと、様々な使い方がされています。

 

モニター

太陽光発電所から遠く離れていても、「発電・売電」の状況や「使用電力量」「時間帯別電気料金」「環境貢献度」がわかる太陽光発電システムの周辺機器の一つ。遠隔管理システムに組み込まれています。

 

リチウムイオン電池

日本の吉野 彰 博士はじめ3名の研究者が「リチウムイオン電池の開発」により、2019年にノーベル化学賞を受賞し、注目を集めました。特に太陽光発電との相性が良いと言われていて、今や蓄電池の主流となっています。

※詳しくは、2020年6月8日付のコラム「太陽光発電も進化!?ノーベル化学賞受賞のリチウムイオン電池」もご覧ください。